お姫さまになりたい

小さい頃のゆめ、お姫さまになりたいだった。小学生半ばまで本気でそう思っていたし、中学に入ってからさすがに諦めたけど、ゆめは、セダンに乗ってオーダーのスーツを着こなしたかっこいい男の人と付き合ってお姫さま扱いされて、結婚して幸せな家庭を持つこと。そんなゆめは、社会人になって数年もしたら消えてなくなった。そしてわたしは自分でセダンを新車で買った。値段はそんなに高くないけど、赤くてカッコいいわたしのセダン。彼氏なんて出来なくて、誰も迎えに来てくれやしないから、自分で買った。やりがいのある仕事についている。職場の上司や環境も大好きだ。ずっとこの職場で働いてたくさん役に立ちたい。数年後には支店を広げて、そこの責任者になりたい。わたしのゆめ、今はそれ。だいぶ現実的なゆめになってしまった。おそらくこれから先、セダンに乗ったスーツの似合う王子様も現れそうにない。幸せな家庭も持てないだろうし、望んでいない。でもそれでいい。欲しいものは自分で手に入れる。25年生きて、それだけの自信がついた。でも小さい頃のゆめ、まだ諦めたわけじゃない。わたしはわたしをお姫さまにしてあげることができる。(給与の問題で、贅沢なお姫さまにはしてあげられないけど…。)

他の誰のためでもなく、わたしはわたしをお姫さまにしてあげる。お気に入りのカバン、ワンピース、素敵なブラウス、大好きな赤いリップ、キラキラのハイライト、桜のフレグランス、見るたび心が躍る素敵なネイル、たくさんの本、iPhoneから流れる音楽、何回も観たロリータの映画、そして赤いセダン。好きなものに囲まれて、わたしはわたしをお姫さまにしてあげる。誰かのお姫さまにもなりたいけど、いいの、機会があればで。お姫さまには、素敵な王子様が付き物だろうけど、王子様がいなくても構わない、そんなことは、どうだっていい。他の誰でもないわたしの人生、わたしが一番大事だから、わたしはわたしの為にお姫さまになる。わたしはお姫さまだから大事にしてあげないといけない。

みんな、自分をお姫さまにして大事にしてあげようね。